【感想】山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』

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ビジネス書

この本について

書誌情報

タイトル経済評論家の父から息子への手紙
著者山崎元
出版社Gakken
発売日2024年2月15日
ページ数192

あらすじ

経済評論家の著者が、余命3か月ならぜひやっておきたいと思ったことの一つが、本書の執筆だった。お金や働き方、ひいては人生についてどう考えていくべきか、著者がこれまでの経験を通じて得た哲学がアドバイスとして語られている。息子が大学に入学した際に、実際に送られた手紙を元にした内容。
章立ては下記の通り。

第一章 働き方・稼ぎ方
第二章 お金の増やし方と資本主義経済の仕組み
第三章 もう少し話しておきたいこと
終章  小さな幸福論

感想

想定読者はこれから働く「若い人」

この本を購入したきっかけは、身も蓋もない話なのですが、Kindle日替わりセールの対象になっていたのを見つけたからです。

著者の最後の書き下ろし作品として出版されているのは知っていて、多少の興味はあったものの、恐らく私はこの本が想定している読者像に合致する人間ではないだろうと思い、ひとまず見送っていたのです。それでも気にはなっていたので、セール価格にこれ幸いと飛び付いたわけでした。

ちなみに、まえがきの数行目に早速想定読者の話が出ていました。

想定する読者は、第一に著者から見て息子や娘のような年齢の、これから働き、お金を稼ぎ、増やして、使っていく「若い人」だ。

山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』p.2(Kindle)

あらすじに書いた通り、元になっているのは大学に入学したご子息への手紙なので、想定読者も当然そうなるだろうという感じです。全編通して読んで、やはり若い人向けの内容だと思いました。

大人が読んでいて参考になるエッセンスも色々と含まれてはいましたが、著者のご子息と同じ年齢、つまり大学に入学してこれから将来のことを考えていくといった段階の若い人が読んだ方が、大人が読むよりも遥かに役立つ内容だと思います。

例えば第一章で語られる働き方については、株式と上手く関わることが重要だとして、具体的に取るべき方法が示されています。それは、①自分で起業、②起業に参加、③報酬の大部分を自社株か自社株のストックオプションで払う会社で働く、④起業の初期段階で出資、この四つです。

それなりに年を重ねた人間からすると、今更この方法を取るのは難しいと感じます。ただ、若い人にとっては今後の働き方を考える上で大いに参考になるのではないでしょうか。

運用はシンプルに、インデックスファンドへ投資

若い人のカテゴリーに入らない私が最も気になるのは、やはりお金の運用方法についてです。

これについては基本的に、①生活費の3~6か月分以外を運用資金にする、②運用資金を全額「全世界株式のインデックスファンド」に投資、③お金が増えた分はその都度追加投資し、必要になった分はその都度解約する、とありました。

私は把握していませんが、著者は恐らく他でも同じ内容について語っているのではないかと思います。

インデックスファンドを選ぶ著者が、なぜアクティブファンドが勝てないと考えるのかと言うと、著者が名付けた「平均投資有利の原則」という仕組みがあるからだそうです。

平均投資有利の原則を言葉で説明すると、市場での運用競争にあっては、ライバルの平均でもある「市場の平均」を持ってじっとしていることが有利であるということだ。

山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』p.45(Kindle)

アクティブファンドに無駄な売買コストや手数料を払わず、シンプルに運用することを勧めています。

また、全世界株式のインデックスファンドについては、日本株を含むタイプが好ましいものの、含まないタイプ、先進国株式タイプなどでも、手数料が十分に安ければ良いだろうとのことです。

代表的な商品としては、やはり「eMAXIS Slim 全世界株式(通称オルカン)」が挙げられていました。山崎さんといえばオルカンという印象があります。

まとめ

巻末には、ご子息に送られた実際の手紙の文章も載っています。

大人に育ったことで親孝行は十分済んでいるから、後は好きにせよ、というのが大意だ。

山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』p.104(Kindle)

私がイメージする手紙に比べると文章が硬いようにも感じましたが、子を想う親の気持ちが随所から伝わってくるので少し涙腺にきました。息子に話すつもりで書いたという本文は、著者の心からのアドバイスなのだろうと思います。

最後に、ご子息へのインタビュー記事を見つけたので紹介しておきます。本の中で、人間関係の基本に挨拶を挙げつつ、「なぜ重要かは知っているはずだ。」という言葉だけで終わっている部分がありました。その挨拶の話が出ていて、父の言葉は届いているのだなあとなぜか私が嬉しくなりました。

息子が語った「父・山崎元」からの”最も有用な助言” | 東洋経済オンライン

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