【感想】松浦弥太郎『伝わるちから』

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エッセイ

この本について

書誌情報

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タイトル伝わるちから
著者松浦弥太郎
出版社小学館
発売日2017年12月6日
ページ数208

あらすじ

人付き合いのコミュニケーションに悩んでいる時に役に立つ、たくさんのヒント。なかなか相手に届かない自分の思い。それは伝えようとするから。では伝わるためにはどうすればよいのか。そのコツを、元「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんが教えます。

章立ては下記の通り。

Chapter1 お礼上手になる
Chapter2 旅で自分を見つける
Chapter3 誰かのためにする
Chapter4 お辞儀の仕方を身につける
Chapter5 心を整理整頓する
Chapter6 「らしくない」にチャレンジする

感想

本を手にしたきっかけ

SNSでは室内やデスクの写真を見るのも好きな私です。丁寧な暮らし系インフルエンサーと言うのでしょうか、そういう人たちの投稿も流れてくるので、素敵な写真だなと思いながら見ているのですが。その写真によく写り込んでいると感じるのが、松浦弥太郎さんの本です。本当によく見かけるし、なんならおすすめしている文章もあったので、手に取りました。ちなみに色々な選択肢がある中でなぜこの本を選んだのかは忘れました。

上記のあらすじは、タイトルに合わせた文章だと思います。全体に通じるテーマはそうなのでしょうが、個々に見ていくと、「伝える」「伝わる」に限った話ばかりではありません。生活の中で見つけた気づきがちょっとしたエピソードと共にそっと送られてくる、そんなエッセイ集です。

先に挙げた丁寧な暮らし系インフルエンサーの人たちがまさに意識していそうなところも多くあると感じられ、道理であの界隈でよく読まれているわけだと個人的には納得でした。

穏やかな調子で綴られる文章が魅力

僕の大好きな言葉に「スコアボードではなく、グラウンドで行われている試合をしっかり見る」というのがある。結果やデータを知るのに一所懸命になるのではなく、実際にそこで変化していること、そこで動いていること、そこで起きていることを、よく観察するという意味だ。なんでも簡単に知ることができる時代だからこそ、とても大事なことだと思う。

松浦弥太郎『伝わるちから』p.29

本の中で多く出てきていたのは、「よく見る」ということです。よく見ることは誰にでもできる学びであり、そして「見る」とは「気づく」、「見つける」とは「感動する」に通じ、誰よりも早く多く見つけるのが大切なのだそうです。…かいつまんでの説明では味気も何もあったものではないですね。

この本の魅力は、何かしらの教えや真理などではなく、松浦さんの文章自体にあるのだと思います。穏やかで押しつけがましくない文章だからこそ、そうだよなーと自然に受け入れられる感じがあります。

それから、「あなたにはどんな味の記憶がある?」「憧れの人はいる?」「弱ってしまった時の避難場所はある?」などと問いかける文章も少なくありませんでした。これは自分のことも合わせて考えられるきっかけになるし、なんとなく著者と読者との距離感が縮まって親しみがわいてくる効果もあるような気がしました。

余裕を感じる内容と自分とを比べてしまい…

以上の通り、文章は優しく、読後感は良く、満足ではあったのですが。が、です。海外を旅したり、若い恋愛を楽しんだり、素敵な服でおしゃれしたりと、そういう余裕があったからこそ書ける内容ではないかと若干の僻みも感じてしまいました。そもそも丁寧な暮らし自体がそうです。憧れる暮らしではあるけれども、私にとっては中々実現が難しいもので。やる気がないからだと言われればそうかもしれませんが。

読書について、「読む時の自分の状態によって、新しい出合いや気づきがあるのも読書の妙味である。(p.88)」とありました。正直、気持ちがささくれ立っている時にこの本を読んでいたら、あまり良い印象にならなかったかもしれないなと思います。今回は比較的気持ちに余裕がある時だったので良かったです。解説には「松浦さんの本は疲れている時でもスラスラと読めてしまう。(p.193)」とあり、スラスラ読めそうな感じはわかるのですが、疲れている時に読むのは、私には合わないかもしれません。

まとめ

最後に私の捻くれたところが出てしまいましたが、本の内容的には心持ちの話がメインです。その辺りを素直に受け取るだけにしておけば良いと自分にも言い聞かせました。…それができれば苦労はないというのもよくわかります。

数年後か数十年後、また全く違う状態の自分になった時に読んだらどう思うのでしょう。今より色々なことが素直に響いてくるかもしれないし、逆に余裕がなくて受け付けなくなってしまっているかもしれないし。そういう経過観察にも向いている本のような気がしてきました。

やっぱり、本との関係は、人との関係に近いと思う。一目ぼれもあるし、なかなか仲良くなれないこともある。長く付き合って、やっとわかり合えることもある。けんかもあるし、別れもある。

松浦弥太郎『伝わるちから』p.88
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