【感想】後藤達也『転換の時代を生き抜く投資の教科書』

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ビジネス書

この本について

書誌情報

タイトル転換の時代を生き抜く投資の教科書
著者後藤達也
出版社日経BP
発売日2024年1月25日
ページ数336

あらすじ

この本は投資に興味のなかった方に、わかりやすく、偏りなく、投資の世界を案内するのがねらいです。

後藤達也『転換の時代を生き抜く投資の教科書』p.3

X(旧Twitter)フォロワー63万人、YouTube登録者数26万人、note有料会員2.5万人という元日経新聞記者の後藤達也さんが、株式投資を中心に経済やお金の仕組みといった金融の世界について易しく説明している本。2024年出版ということで、新NISAの開始、インフレ、円安、株高といった情勢を踏まえた内容に。
章立ては下記の通り。

第1章 投資が欠かせない時代に入った
第2章 株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう
第3章 株価はなにで動くのか
第4章 中央銀行は金融市場の心臓
第5章 投資をはじめよう

感想

本を手にしたきっかけ

本の中でも言及されている通り、著者の後藤さんは、日経新聞の記者をしていた時代からXで金融関係の投稿をされていました。速報性がある上にわかりやすいので、その頃から私もフォローしています。今回の本の出版についても、後藤さんの投稿から知りました。

初心者向けの内容と言われていて、既に投資経験もあり投資関係の本も何冊か読んできた私としては、知っている内容が多いかもと思ったのですが…Xの情報はよく見させてもらっているし、応援する意味でも買おう!と考えて購入。

発売前からAmazonでベストセラーになっていたり増刷になったりと、その人気ぶりを改めて感じました。私も予約していたのですが、タイミングが少し遅かったせいか2刷でした。こうなると惜しい気持ちになります。

出版のお知らせポスト

投資を始めていない人に読んでほしい第1章

第1章では、iPhoneやディズニーランド入場チケットなどの価格高騰に触れながら、将来への備えとしても投資について真剣に考えておいた方が良いと述べられています。

特に昨今の円安インフレという状況下で円建ての銀行預金しか資産がないというのは、逆に危険です。今まで投資を忌避してきた人も、金儲けするためという攻めの視点から見るのではなく、生活防衛のためという守りの視点から見ると、投資の印象が変わってくるのではないでしょうか。

またこの章では、実利的な面以外にも、投資の世界を知ることで教養やセンスが身に付くといったメリットについて語られています。日々流れている様々なニュースへの関心度、知識の吸収度も高まります。

いざ投資を始めると、経済や企業ニュースはもとより、政治、社会、テクノロジー、海外、自然災害……あらゆるものへの関心が飛躍的に高まります。

後藤達也『転換の時代を生き抜く投資の教科書』p.30

本の中でも言われている通り、投資に必要な知識は経済分野のものに限りません。引用文にあるような、あらゆるものが投資に影響してくる可能性があるので、必然的に興味を持ってニュースを見るようになります。

これは私も実際に感じます。投資を始める前は、経済関係のニュースはよくわからないままとりあえず耳に入れておくだけ、ニュースの終わりに流れる日経平均株価などの値もスルーでした。

投資を始めると、例えば日経平均株価が前日終値から突然マイナス700円の値をつけた時、「どうしてこんなことに!?」と理由を求めてニュースを検索します。そこで、アメリカの影響であったり政治家の発言であったり自然災害であったり、理由となりそうな情報が出てくるわけです。

そういうことを繰り返している内に、ニュースをよく見るようになるだけではなく、ニュースと株価は繋がっているのだとわかるようにもなってきます。

これも本の中で言われている通り、投資はなるべく早く始める方が良いと思います。

自分のお金を元手にする以上、もちろん失敗はしたくないので、先にある程度の勉強をしてから…と考える人もいるかもしれません。それはそれで良いのですが、投資を始めてから勉強する方が、知識を吸収して定着させる効果は非常に高いはずです。私ももっと早くから始めていればと後悔しているクチですし、金融関係の教育も受けられつつある今の子供は羨ましいです。学生時代から投資を始めている人は最高に羨ましいです。学生で始めている人は、就職活動でも情報収集などの面で有利だろうと思います。

このように、第1章は投資へのチャレンジを後押しするような内容だったので、私も「そうだよな~」と思いながら読んでいました。この章は特に、投資を始めていない人に読んでほしいところです。

この辺りの内容については、日経BOOKプラスというサイトで抜粋、再編集して紹介されていたので、気になる人はチェックしてみてください。

後藤達也の「投資の教科書」|日経BOOKプラス

日米の中央銀行の基本がわかる第4章

第4章のテーマは中央銀行で、日本銀行やアメリカのFRBを中心として語られています。基本的な内容から、日銀前総裁の黒田さんの政策、2023年4月に総裁となった植田さんの姿勢、コロナ後のアメリカの金融政策など、まさに今知っておきたい情報が盛りだくさんという感じでした。こうした内容を把握できていると、ニュースを見る上でも非常に役立つと思います。

個人的に少し難しいと感じたのは、イールドカーブ・コントロールに関する部分です。

イールドカーブ・コントロールは(中略)10年物国債の金利を0%程度になるよう、日銀が国債を売買して誘導するものです。国債の金利は通常プラスですから(そうでないと誰も国債を買いませんよね)、日銀が国債を買って、強引に0%に押さえつける感じです。

後藤達也『転換の時代を生き抜く投資の教科書』p.256

日銀が国債を買えば強引に0%に押さえつけられる、その理由がよくわからなかったので調べてみました。覚え書きとして残しておきます。要は、自由に売買できる国債を日銀が大量に買い入れると、国債の需要が高まることで価格も上昇し、金利が低下するとのことです。

第1~3章に比べると初心者には難易度の高い内容となっている気がしますが、先にも書いている通り、今知っておきたい情報ではあるし、他の初心者向けの本ではあまり見ない内容ではないかと感じたので、あって良かったと思います。私も改めて勉強になりました。

ちなみにアメリカのコロナ後のインフレなどに関する部分は、渡辺努さんの『世界インフレの謎』(2022年10月発行)が詳細で面白かったです。

まとめ

本の最後を飾る第5章では、具体的な投資の話に踏み込んでいます。また、投資詐欺はもちろんですが、SNSの情報も鵜呑みにしないようにという注意喚起もなされています。これから投資を始める人で、第2~4章の内容はわかりにくくて飛ばしてしまったという場合でも、第5章は読んでおくべきだと思います。

レストランを例にした決算書の話やジブリを例にした企業価値の話など、投資をする上での基礎知識がわかりやすい文章で説明してありました。最後まで読んでみて、やはり初心者向けという感じはします。ただ、私は初心者とは言えないながらも、わかっているようでわかっていなかった(特に第4章)部分があったので、頭の整理ができて良かったです。

あらすじの部分で書いた通り、この本は2024年初頭時点の情勢を踏まえた内容です。もしかすると今後はマイナス金利が解除され日米の金利差が縮小し、一転して円高局面を迎えることになるかもしれません。そういう状況でも為になる本ではあるのですが、やはり現実と本の内容とが合致しているタイミングで読む方がリアリティがあってわかりやすいと思います。

なので、少しでも興味があれば早めに読むことをおすすめします。

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