【感想】鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』

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エッセイ

この本について

書誌情報

著者:鈴木俊貴
¥1,870 (2025/06/22 15:46時点 | Amazon調べ)
タイトル僕には鳥の言葉がわかる
著者鈴木俊貴
出版社小学館
発売日2025年1月23日
ページ数264

あらすじ

NHK『ダーウィンが来た!』をはじめ国内外のメディアが注目する気鋭の若き動物言語学者による初の単著、ついに刊行!

古代ギリシャ時代から現代に至るまで、言葉を持つのは人間だけであり、鳥は感情で鳴いているとしか認識されていなかった。
その「常識」を覆し、「シジュウカラが20以上の単語を組み合わせて文を作っている」ことを世界で初めて解明した研究者による科学エッセイ。
動物学者を志したきっかけ、楽しくも激ヤセした森でのシジュウカラ観察の日々、鳥の言葉を科学的に解明するための実験方法などを、軽快に綴る。

シジュウカラへの情熱と愛情あふれるみずみずしい視点に導かれるうちに、動物たちの豊かな世界への扉が開かれます。読後に世界の見え方が変わる一冊。巻頭口絵にはシジュウカラたちのカラー写真が、巻末にはシジュウカラの言葉を聞ける二次元コードつき。

https://www.shogakukan.co.jp/books/09389184

感想

本を手にしたきっかけ

この本のことは、おすすめしている内容のポストがXで流れてきて知りました。動物をはじめとした生物の話題には比較的興味がある方なので、どんな本なのかと早速Amazonの商品ページに飛んだところ、著者の写真が載っていてハッとしたのです。以前プロフィール写真のアンケートでバズっていた人だ!と。

インパクトが強かったので覚えていたのでしょうね。当時の私は即決で③に投票しました。そして、あんなアンケートを取るような人の書いた本なら面白いに違いない!と、これまた即決で購入しました。中々レアな購入経緯だったなと思います。

そんなわけで肝心の本の内容をよく把握していなかったので、学術的な話をわかりやすくした感じかと思っていたのですが、あらすじ部分にもある通り、これは「科学エッセイ」でした。もちろん鳥の言葉に関する研究内容についての説明がメインですが、そこに至るまでのドタバタ劇や閑話休題的な話題も多くエッセイ調なので、門外漢の私でも最初から最後まで楽しんで読むことができました。売れているのも納得です。

シジュウカラは言葉を使うし文も作っている

動物の鳴き声は意味を持たないと言ったアリストテレスの時代から、言葉は人間だけのものとされてきました。そんな説明を読んで、そもそも動物が言葉を持つかどうかを気にしたことすらなかった自分は一体…と呆れつつ。

人間には人間の言葉があるように、鳥には鳥の言葉がある。人間の言葉は動物の言葉の一つにすぎないのだ。

鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』p.11

本の中では、シジュウカラの鳴き声が持つ意味の研究に始まり、言葉を使うこと、そして文を作ることまで明らかにされていきます。その一連の流れがとてもわかりやすいです。私の場合、実はこの本の前に『動物たちは何をしゃべっているのか?』という鈴木先生と山極先生の対談本を読んでいたので予習はバッチリな状態だったわけですが、それがなくても問題なく読めたと思います。(ちなみにこちらの本も面白かったのでおすすめです。)

巻末にシジュウカラの鳴き声が聞けるQRコードが載っていたのも、配慮が行き届いているのを感じて嬉しかったです。読んでいる途中で、実際どんな鳴き声なのかと検索して出てきた音声を聞いてみたのですが、「ツツピー」すらどの鳴き声を指しているのかよくわからずもやもやとしていたので。これを聞いてから、外にいる鳥の鳴き声に耳を澄ませているのですが、まだシジュウカラの声は聞けていません。

中には研究者らしい笑わせポイントも

笑えたという意味で面白かったのは、フィールドワーク中に食材が尽きてしまった話です。実際は笑っている場合ではないのですが、笑い話として提供されていると思われるので、遠慮なくそのように受け取らせてもらいました。イチオシは、一日三食を唯一残っていた白米のみで過ごしていた時の以下の文章。

僕としては一日三食ちゃんと食べていたし、大きな問題は感じていなかった。メニューはすべて白米であったが、冬場は鳥たちも種子ばかり食べているので、同じことである。

鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』p.41

こういう常人とはかけ離れた感性を大真面目に見せつけてくる感じ、大好物でして。同じような趣味をお持ちの方にはぜひ読んでみてください。

あとは、シジュウカラ語を解するご両親の話も面白かったです。実家の巣箱には18年以上シジュウカラが入ってきて、その様子はカメラを通じて家のテレビで見られるとなれば、ご両親が過保護になるのもわかります。…わかりますが、それでもシジュウカラ語を聞いて天敵の存在を察知したり、餌やりを手伝ったりというのはすごいなと。こうした雰囲気のご家庭なら、研究の道にも進みやすかっただろうと勝手に想像してしまいました。

まとめ

僕は立ち上がった。
鳥たちの言葉の世界と人間の世界をつなごう。そして、もう一度、自然を正しく観察する目を人類にインストールするのである!

鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』p.234

言葉によって自然と自分たちを切り分けた人間の意識を変えるべく行動を開始した鈴木先生は、SNS、講演会、テレビ、ラジオなどにおける普及活動を経て、本の出版に至ったとのことでした。私はこの本に出合うまで鳥の言葉の研究について全く知らなかったですし、SNS上で同じような人も見かけたので、この普及活動は間違いなく裾野を広げることに成功していると思います。

動物の言葉を解き明かす「動物言語学」という学問分野を開いたことから、シジュウカラ以外の言葉の研究も進んでほしいとの願いも語られていました。それは私も大いに興味があります。鳥や動物たちの言葉を知って彼らの世界を理解することが我々の毎日を豊かにするという主張は、正直まだあまりピンと来ていません。ただ、そうなったら素敵だなとは思いますし、そうなってほしいとも思います。

これからは動物言語学の分野もチェックしていきたいので、まずは先生のXをフォローしなければ。

僕は信じている。鳥たちの言葉の世界を知ることで、僕たちの毎日はもっと豊かで色鮮やかなものになるはずだ。

鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』p.11
著者:鈴木俊貴
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次に読むおすすめ本

著者:山極寿一、鈴木俊貴
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上でも少し触れた、ゴリラを専門に研究する霊長類学者の山極寿一先生と今回の記事で紹介している鈴木先生の対談本。動物の言語や文化について更に深めるための第一歩に。

鳥類学者によるドタバタ科学エッセイ。完全に笑いを取りにいく方向性の文章なので、全く知らない鳥の話題であっても面白く読める。鳥類学の世界に引き続き楽しく浸りたいならこちら。

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